本日より、弊社社長と疑似子育て始めます


ベビーシッターを頼んだ経緯から、野々花はきっと一哉が好意を抱いているなんて思っていないだろう。不用意に怖がらせたり混乱させたりしたくないし、最悪の場合、彼女の住む場所を奪ってしまいかねないのだから慎重になるべきだ。

それに、双子の世話はとにかく大変だが、そこに野々花が加わるだけで日々に彩りを与えられたような幸福感がある。男として彼女を自分のものにしたいという欲望もあれど、野々花の手を借りて双子の成長を見守りながら穏やかな日々を過ごす今の生活も意外と気に入っていた。

「それにしても、一哉が選んだのは野々花ちゃんかぁ。たしかに可愛いし一生懸命だし、真面目に付き合うならああいう子がいいよな」
「……お前のそれに他意がないとわかってても、名前で呼んでるのを聞くのはいい気がしない」

野々花には家では役職ではなく名前で呼ぶことを強要したけれど、彼女を名前で呼ぶには至っていない。自分ですら成し得ていないのに、相澤が当然のように『野々花ちゃん』と馴れ馴れしく呼んでいるのは正直面白くなかった。

「あはは! 中学生かよ。お前も呼べばいいだろ。俺が急に彼女を『宮部さん』て呼び出すほうが色々勘ぐられると思うけど?」
「……わかってる。別にやめろなんて言ってないだろ」
「重症だな。だいぶ沼ってるじゃん」
「なんだよ、沼ってるって。お前こそいい加減中学生みたいな話し方はやめたらどうだ」