「あ、そうだった。ほら、維月も行くぞ」
「やっ。あしょぶ」
「あとでまた戻って遊べるから。じゃあ宮部さん、また会社で」
「は、はい」
会釈してそそくさとその場を立ち去ろうとしたのだが、野々花が助けた男の子がなかなか手を離してくれない。
「維月」
「おしっこ、ない。あしょぶ」
「わかってる。でも李月が行きたいんだって。まずは一緒にトイレに行って、それから遊ぼうな。ほら、手を離して」
「いやっ! あしょぶのーっ!」
維月と呼ばれる男の子は野々花の手を握ったままぴょんぴょん飛び跳ね、主張を曲げそうにない。その間にも、李月と呼ばれた男の子は「おしっこー!」と大声で叫び続けている。最早カオス状態だ。
ヒートアップしそうな彼らを放っておけず、野々花は遊びたいと訴える維月に微笑みかけた。
「お名前、維月くんっていうの?」



