野々花のような女性とならば、長らく遠のいていた恋愛にも前向きになれるかもしれない。そんな感情が心に芽生えた。
けれど、ちょっと気になるからといって自社の社員に安易に手を出していいはずがない。それに野々花は維月の恩人だ。彼女が引き止めてくれなければ大怪我をしていたかもしれない。
一哉は逸る気持ちを抑え、週明けに改めてお礼を伝えようと広報部に顔を出したが、彼女の自宅が火災に遭ったため休んでいると聞いた。彼女の上司いわく、ひとり暮らしで色々大変だろうから一週間ほど休暇を取るように伝えたが、彼女は明日には出社すると返事をしたらしい。
責任感が強い彼女らしいけれど、どうにも心配だった。自宅が焼けてしまったのならきっと住むところにも困るだろうし、保険の手続きなども煩雑で面倒なはずだ。
一哉の脳裏に、彼女に住み込みでベビーシッターを頼むのはどうかという突拍子もない案が浮かんだのはその時だ。しかし、さすがに自分でも非常識な提案だと理解していたし、実際に口にすることはないと思っていた。
(まさか、彼女がネットカフェで暮らしているとは……)



