とはいえ異性として意識していたわけではなく、優秀な広報として頼もしく感じていたに過ぎない。
そんな彼女と休日の公園で偶然出くわし、甥っ子の危機を救ってもらった。子供の扱いに慣れているらしい彼女は会社で見る凛とした表情とは違って柔らかく優しい笑顔を浮かべており、つい見惚れてしまう。
一哉の周りの女性といえば、女王のような姉か、容姿や会社経営者というステータスにすり寄ってくる自尊心や虚栄心の強い女性が多い。姉の助言で試しに雇ってみたベビーシッターも、双子の世話をそっちのけで一哉に対し秋波を送り、その手の誘いをかけてきた。
ほとほとうんざりしていたけれど、野々花は違う。
李月をトイレに連れて行く数分の間だけ維月を預かってもらったが、一哉が戻ってきたのも気づかぬほど無邪気に遊んでいたし、きちんとお礼を告げる間もなく『私、誰にも言いませんから……!』と逃げるように立ち去ってしまった。
慌てた様子が可愛くて、つい笑みが零れた。きっと変な誤解をしたのだろう。
一哉と関わりたいとか、社長に恩を売りたいとか、そういった打算なく純粋な厚意で手助けを申し出てくれたのだとわかり、その純真さに惹かれた。



