本日より、弊社社長と疑似子育て始めます


『子供たちを置いて戦地取材? あり得ないだろ』
『非常識なことを言ってるのはわかってる。でも、ここ数日考えた結論なの。私の戦争についての記事を読んで声をかけてくれて、私も彼らの信念に共感した。戦争の犠牲になるのはいつも子供たち。そんな残酷な現実を世界に知らせる仕事がしたいの』

子供の頃から人一倍正義感が強い美月らしい言い分だった。

『チームには戦地取材に慣れた人ばかりだし、現地スタッフもセキュリティ担当もいる。彼らが少しでも違和感を感じたら撤退するっていうルールがあるし、絶対に安全第一で無茶なことはしないって約束する。だからお願い。二ヶ月だけ維月と李月を預かってほしい』

正直に言えば、今も美月の言い分を完全に理解したわけではない。幼い子供を残して海外へ、それも戦場へ向かうなんて一哉の常識ではあり得ないと思うし、『今じゃないとダメなのか』という疑問もある。

けれど、一哉は美月が双子の父親と離婚して深く傷ついているのを知っている。気丈に振る舞っていたけれど、元夫は妊娠中から浮気していたようなクズな男で、出産直後に別れた当時はさすがの姉も倒れてしまうのではと心配になるほどだった。

それでも彼女は仕事と育児を両立させ、実家の手を借りずにここまで双子を育ててきたのだ。シングルマザーは今の時代珍しくないとはいえ、諦めざるを得なかったものもたくさんあっただろう。それは、ひとりの心休まる時間だったり、仕事だったり、一哉には想像できないものもあるのかもしれない。