「維月くんと李月くんのママが帰ってくるまで、一哉さんと私がそばにいるよ。寂しいけど、私たちといっぱい遊んで待ってようね」
そう双子に優しく微笑みかける野々花は、まるで泣きたいのを我慢しているかのような表情に見えた。きっと、母親と離れている彼らの境遇に心を寄せてくれたためだろう。
野々花と双子が知り合って、まだたったの二週間。にもかかわらず、これほどふたりに親身になってくれるとは一哉にとってありがたい誤算だった。彼女のひだまりのような優しさに包まれていると、一哉まで心があたたかくなる。
元々人見知りしない性格ではあるものの双子がここまで急速に懐いたのは、彼女が子供の世話に慣れているというのもあるだろうけれど、一番大きな理由はその人柄ゆえだろう。押し付けがましくない優しさと、直すべきところはきちんと叱ってくれるあたたかさに、自然と惹きつけられるのだ。
同居初日、彼女は双子が脱ぎ散らかした靴をきちんと揃えさせた。二歳にならない子には無理だろうと口先だけで注意していただけの一哉と違い、野々花は彼らに伝わる言葉で窘めてくれたのだ。
今ではふたりとも『おくつさん、なかよしよ』と自発的に揃えるようになったのは、間違いなく彼女のおかげだ。
一哉は、あたたかい家庭というものを知らない。母親に抱きしめられた記憶もないし、父親に遊んでもらった思い出もない。それは姉の美月も同じだろう。



