触れたら何かが変わってしまいそうで、触れられない。
夏祭りの音が、やけに遠く聞こえた。
「すっかりみんなと逸れちゃったな。腹減った。桜庭、なんか食おうぜ」
さっきまでの空気を誤魔化すみたいに、颯斗が言う。
「ロングポテト食べたい」
即答。
『ガハハハッ! 色気ゼロ! 浴衣でロングポテトとか最高に沙彩だな!』
(うるさいよ)
小声で返す。
「えっ?」
颯斗が首をかしげる。
「な、なんでもない!」
慌てて屋台の方へ歩き出す。
背中が少し熱い。
さっきまであんなに甘い空気だったのに。
ロングポテト。
塩味。
現実的。
――ちょうどいい。
颯斗が後ろから笑う。
「いいじゃん。俺もそれにする」
(なんで合わせるのよ)
でも、ちょっとだけ嬉しい。
二人で屋台に並ぶ。
それだけなのに、落ち着かない。
「あの人、かっこいい」
「隣の子、彼女かな」
ひそひそ声が、やけに近い。
(内緒話は、聞こえないようにしてよ)
視線が、じわっとまとわりつく。
『あーあー。なんで人間って、すぐ品定めみたいなことすんだかね』
鬼太が鼻で笑う。
『好きとか嫌いとかより、まず“どう見えるか”かよ』
(……ほんと、それ)
私はポテトの値段表をじっと見つめる。
隣にいるだけなのに。
ただ並んでいるだけなのに。
胸が、ざわざわする。
颯斗の彼女は――
こんな視線にも平気で笑っていられるような、
誰が見ても「お似合いだよね」って言われる人じゃないといられないんだろうな)
改めて、颯斗の遠さを思い知らされる。
夏祭りの音が、やけに遠く聞こえた。
「すっかりみんなと逸れちゃったな。腹減った。桜庭、なんか食おうぜ」
さっきまでの空気を誤魔化すみたいに、颯斗が言う。
「ロングポテト食べたい」
即答。
『ガハハハッ! 色気ゼロ! 浴衣でロングポテトとか最高に沙彩だな!』
(うるさいよ)
小声で返す。
「えっ?」
颯斗が首をかしげる。
「な、なんでもない!」
慌てて屋台の方へ歩き出す。
背中が少し熱い。
さっきまであんなに甘い空気だったのに。
ロングポテト。
塩味。
現実的。
――ちょうどいい。
颯斗が後ろから笑う。
「いいじゃん。俺もそれにする」
(なんで合わせるのよ)
でも、ちょっとだけ嬉しい。
二人で屋台に並ぶ。
それだけなのに、落ち着かない。
「あの人、かっこいい」
「隣の子、彼女かな」
ひそひそ声が、やけに近い。
(内緒話は、聞こえないようにしてよ)
視線が、じわっとまとわりつく。
『あーあー。なんで人間って、すぐ品定めみたいなことすんだかね』
鬼太が鼻で笑う。
『好きとか嫌いとかより、まず“どう見えるか”かよ』
(……ほんと、それ)
私はポテトの値段表をじっと見つめる。
隣にいるだけなのに。
ただ並んでいるだけなのに。
胸が、ざわざわする。
颯斗の彼女は――
こんな視線にも平気で笑っていられるような、
誰が見ても「お似合いだよね」って言われる人じゃないといられないんだろうな)
改めて、颯斗の遠さを思い知らされる。


