天邪鬼な私に、宣戦布告されました

「あー、疲れたー。颯斗ありがとう。草履が歩き慣れなくて思ったより疲れてたみたい」

公園のベンチに腰を下ろすと、思っていた以上に足がじんと重かった。

「そっか、よかった」

颯斗は小さく息を吐く。

「何も言わずに強引に連れてきちゃったから、本当はまだいたかったんじゃないかと思ってた」

「まぁね。急にどこに行くのかとは思ってたけど」

ロングポテトを一本くわえながら、わざと軽く言う。

少しの沈黙。

夜風が、屋台の匂いを薄く運んでくる。

「……さっきの人、わざと桜庭にぶつかってきたんだよ」

「えっ?なんで?」

颯斗は少しだけ眉を寄せる。

「桜庭が可愛いからだろう」

はっ?

「あはははっ、何言ってるの颯斗?
頭、大丈夫?」

笑いながら肩を小突く。

「近くにいた男子、みんな桜庭を見てたろ」

「えっ。やだ、私、なんか変?」

思わず自分の身体を見下ろす。
浴衣、帯、裾。
髪型――と頭に手をやる。

「そうじゃない」

颯斗の声は低い。

「桜庭が可愛いからだよ」

笑っていない。
からかいでもない。

ただ、真面目な目。

「……」

言葉が出ない。

夜風が、二人の間をすり抜ける。

「だから、ちょっと嫌だった」

ぽつり。

「え、なんで」

「俺が隣にいるのに」