天邪鬼な私に、宣戦布告されました

階段中に私の声が反響する。

「なに!? 沙彩、右手痛いの?」

澪が慌てて私の右手を覗き込む。

でも、当然。

他の人から見れば、私はただ自分の右手を凝視しているだけだ。

手のひらの中で、ちっちゃい鬼がジタバタしているなんて、誰にも見えていない。

颯斗はゆっくり立ち上がり、そして私に手を伸ばした。

さっきまで息を呑んでいた人たちから、ざわ…と小さな声が漏れ始める。

私は差し出された手を、恐る恐る掴んだ。

ぐいっと引き上げられる。

体がふわりと浮いて、足が床に戻る。

「おーっ!」

どこからか歓声が上がる。

なぜか拍手まで起きた。

恐る恐る、颯斗を見る。

彼のお腹のあたりには、もう鬼の姿はなかった。

「ありがとう。颯斗は、身体大丈夫?」

私を受け止めたのは颯斗のほうだ。
本当は、私より彼のほうが心配だった。

「あれくらい、どうってことないよ。良かった、怪我なくて」

――微笑んだ。

(え……?)

あの颯斗が。

優しく、笑った。