天邪鬼な私に、宣戦布告されました

何も言わない颯斗。
でも、目だけがきらきらと輝いている。

(本当に作りたかったんだな)

体験を決めるとき、なかなか譲らなかった颯斗の顔を思い出して、思わず笑ってしまう。

「何笑ってるんだよ」

「いや、ごめん。楽しみなんだなって思ってさ」

私はもう一度、並んだグラスに目を移す。

「あっ、これ! これにする」

沖縄の海の色。
そこに吹く爽やかな風を思わせる白い線が入っている、柔らかな曲線のグラスに心を奪われた。

「……いいな、それ。俺も」

(えっ、お揃い?)

そう思って嬉しくなったのを抑える。
(颯斗はそんなふうに思ってないだろうな)

「颯斗、色は?」

「桜庭は青だろ? 俺は……」

そこまで言って、黙り込む。

「何色で迷ってるの?」

「水色か、緑か……」

視線はサンプルのグラスに向けたまま。

「そっか。どっちも綺麗だよね。
あっ、もしかして青が良かったとかある? 私が先に言っちゃったせいで選べなくなったとか……」

「それはない。」

即答。

「あー、もう、わかんねぇや。桜庭が決めて」

「えっ! 私が決めるの?
颯斗、あとで文句言わない?」

颯斗のことだ。
「やっぱあっちのほうがよかった」とか、平気で言いそう。 

それから私は、真剣に悩んだ。
大役を任された気分だ。

水色と緑のグラスをそれぞれ手に取る。

颯斗の隣に並んで、そっと見比べる。

「……私は、颯斗は水色のほうが似合うと思うよ」

少しだけ緊張しながら告げる。

水色と緑。
並べてみて、何度も見て出した結論だ。

颯斗は一瞬だけ水色を見つめて、

「じゃあ、それで」

あっさりと承諾した。

それだけ言うと、お店の人のところへ歩き出す。

本当にそれでいいのか聞き返す暇もなく、
私は慌ててその背中を追いかけた。
――その“当たり前みたいな距離”が、少しだけ嬉しくて。