恋煩いの処方箋

沙也香さんと別れ車に乗ると保育園へと向かった。駐車場で立ち話をしているママさん達に挨拶をして園内へ入る。
「お世話様です。間宮です」
 保育士さんに挨拶をする。
「どうもおつかれさまです! のんちゃん、お迎えでーす」
 元気の良い声に私まで活力をもらう。この園の保育士さん達はみんな明るい。いくつかの園を見学したけれど、それぞれのカラーがあるなと思った。英会話や体操を教えてくれるところ、お寺の保育園、などなど。私はこの太陽みたいな雰囲気が気に入って選んだ。仕事終わりで疲れていても、不思議とここで元気をもらう。
「ママ、みてー」
 和花が手作りの七夕飾りを持って駆けてくる
笹に折り紙の星とビニールテープを割いた吹き流し。そこに短冊が付いて和花の拙い字で【大和くんとママが結婚できますように】と書いてある。和花がそう願ってくれているのはうれしい。けれど、これを保育士さんに見られてしまったと思うとなんだかとても気まずい。
「きれい〜上手に出来てるね!」
「うん!」
 満面の笑みを浮かべる和花を見ていたら、まあいっかと思えた。
 私の地元では七夕は八月七日。町の商店街も飾り付けがされ、出店が出て賑わう。
毎年和花と二人で見にいくのだけれど、今年は大和も一緒に行けたらうれしい。来週末、大和は空いているだろうか。
 帰り道、スーパーに寄って買い物をした。素麺が食べたいというので、乾麺とスイカを買った。フルーツやパプリカを星型にくり抜いて、千切りにしたキュウリと一緒に飾りつける。
「ママすごーい!」
 ほんの少し工夫するだけで、喜んでくれるのでやり甲斐があって楽しい。いつもの素麺もとても美味しく感じられる。
「大和はくんは?」
 理解しているはずなのに、こうして確認してくるのは彼女なりに今日は大和が来ない事を納得する儀式のようなものなのだろう。和花の生活にはもう大和がいて当たり前になってきている。
「今夜は病院にお泊まりの日だよ」
 彼は月に数回当直勤務をしている。翌朝までのはずが結局夕方まで仕事になることが多い。長時間の拘束やそれに伴う過労死が問題が話題だが、昔よりもだいぶ改善されているのだそう。
 夕食を済ませ、お風呂にはいる。肩まで伸びた娘の髪を乾かしながらふと今年は七五三だなぁと思う。出来れば大和のご両親も呼んでみんなでお祝いがしたい。
「ねぇのん。大和のお父さんに手紙を書いてみようか」
「大和くんのお父さん?」
「うん、そう。のんのじいじ」
 結婚の許しはまだ出ないけれど認知はしていいと言ってくれた。大和も色々と考えて動いてくれているし、私もなにかしたい。
レターセットを出してきて、先日のお礼状を書く。わざわざ時間を作ってもらえたのに、その感謝をきちんと伝えられていなかったことが心残りだったから。
和花は色えんぴつで絵を描き始める。四人の祖父母と大和と私、そして自分。みんな笑顔でそれには虹がかかっている。覚えたてのひらがなで、『みんなであそぼうね。ぱんだぐみ まみやのどか』と書く。
「ママみてー」
 満面の笑みを浮かべて書いた絵を掲げる。
「のん、そのままそのまま!」
 私はスマホでその姿を撮影する。コンビニでプリントして同封しよう。
書いた手紙は大和の許可を取って、有馬先生のご自宅へ郵送する。そう簡単に結婚の許可が降りるとは思っていない。けれど、和花の事は知ってもらいたいと思って。