恋煩いの処方箋


「七年ぶりになるのか」
 玄関先で大和が言う。すると途端にあの夜の記憶が蘇ってくる。コンビニでたくさん買い込んだ大きなふたつの袋。濡れ靴を拭くために端切れを渡したこと、社会人ってすごいって褒められたこと。それから……「ねえ、ママぁ」早くドアを開けてと和花が急かす。
「ごめんごめん」
 キーケースから玄関の鍵を取り出す。「持つよ」と言って大和が私の荷物もカバンも全部持ってくれる。
「ありがとう」
 鍵を開けると和花は「どうぞ」とドアを開けた。「部屋狭いけど」なんて、言いながら大和を招き入れる。
「ありがとう、おじゃまします」
 まるで大人に言うみたいに和花に言ってから「入っていい?」と私に聞く。
「ど、どうぞ」
 ここまで来て、立ち入り禁止ですなんて言えるはずがない。
「先生、はやく〜」
 階段の途中で振り返って、和花が大和を呼ぶ。
「和花ちゃん、気をつけて。ちゃんと前向いて」
 そう言いながら、大和は靴を脱いで階段を上がっていく。トントンと足音が同じリズムだ。