ちょっと天然の女子はきらきらでピカピカになる

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 私とリクちゃんが河原に戻ると、グリズさんが、川に、膝まで入って、何やら、していました。
 ポロシャツは脱いで、短パン姿です。
 魚でも狙っているんでしょうか、川に目を凝らしています。
 と、すばやく、右手、左手と、川に突きいれます。
 バシャバシャと水しぶきが大きくあがりました。
 
 お姉ちゃんは、少し離れた岸辺に立って、グリズさんを見ていました。
 足元には、ペットボトルが数本、ころがっています。
 お姉ちゃんも、グリズさんも、頭がいいから、ちゃんと水分補給をしていたようです。

「ただいまー!」
「ただいま帰りましたー!」
 私とリクちゃんが叫んで、お姉ちゃんとグリズさんがほぼ同時に、こちらに顔を向けました。

「おー! 待ってたぜ!」

 グリズさんは、バシャバシャ、川から勢いよく出てくると、両手に紙袋とビニル袋をぶらさげたリクちゃん目がけて、突進するようにやってきました。

「どれ、どれ」

 グリズさんは、リクちゃんの手から、おしゃれな手提げの紙袋をひったくるようにして、受け取ります。

「なんだ、これ?」

 目を剝いて、リクちゃんを見ます。

「スジコ丼じゃねえじゃねえか……」

「白い長い帽子をかぶったジョンソンさんが、特別に鮭のおにぎりをにぎってくれたんです」

 リクちゃんの声は弾んでいました。
 輝くような笑顔です。

 私が、すぐに、リクちゃんの後をひきつぎました。
「暑いから、スジコ丼は、持ち帰りでは売れないって、言われたんです。それで、ジョンソンさんが……」
 
 グリズさんは、私の話すのを、最後まで聞こうとしませんでした。

「なぁっ!」

 変な声をあげ、リクちゃんのお腹のあたりにおにぎりの入った紙袋をおしつけると、その胸倉を鷲掴みにしました。

 マントヒヒの顔が大きくゆがみます。

「てめえっ! 俺にスジコ丼を託されたんだろうがっ!」

「はい。でも、暑いから、持ち帰りはできなかったんです」

「なめんなっ!」

 私は、グリズさんの剣幕に、心臓がドキドキしてしまいました。
 グリズさん、まるで猛獣です。
 全然、さわやかなイケメンじゃありません。

「俺はな、スジコ丼が食いてえんだよ!」

「グリズ君! ちょっと! 何してるの」

 お姉ちゃんが慌てて、グリズさんとリクちゃんの間に割ってはいりました。

「やめなよ! グリズ君!」 

 お姉ちゃんの懸命の制止に、グリズさんは、リクちゃんを突きとばすようにして、その大きな手を離しました。

 リクちゃんは、二、三歩、後ろによろけましたが、紙袋も、ビニル袋も、両の腕で大事に抱えていました。

「グリズ君、落ち着いて。スジコ丼を食べられないのは、この子たちのせいじゃないわ」

「俺の体は、スジコ丼を食う体になってんだよ!」

 グリズさんは、ブーッ、ブーッと鼻息を荒げます。
 やっぱり猛々しい獣です。

 リクちゃんは、平然としていました。
 あんなことをされたのに、怒ってもいなければ、おびえてもいません。
 まったく、いつものリクちゃんです。

 私は、リクちゃん、すごいと思いました。

 もし、リクちゃんが怒ったら、グリズさんとケンカになっていたでしょう。

 もし、リクちゃんがおびえていたら、私がグリズさんとケンカしていたでしょう。
 こわくても、心臓がドキドキしていても、コブラなんとかのやり方を知らなくても、私はグリズさんに、コブラなんとかを、大体の感じで、かけていたでしょう。
 リクちゃんをおびえさせる人なんて、私、絶対に許せませんから。

「グリズ君、あなた、恥ずかしくないの! やつあたりもいいところよ!」
 お姉ちゃんは、肩で息をし、本気で怒っていました。

 私は、お姉ちゃんがとても、頼もしく見えました。
 こういうお姉ちゃんは、私、好きです。