「ねえ。アユ。もう、コブラツイストもかけないから」
私は、頭をぶるぶる振って、お姉ちゃんを払いのけたくなりました。
お姉ちゃんが撫であげてくれた髪の毛もくしゃくしゃにしたくなりました。
その時です。
「こんにちは!」
明るい声が、頭の上でしました。
「コウちゃん、お久しぶりです」
私が目を開け、顔を上げると、リクちゃんがお姉ちゃんにぺこりとおじぎしていました。
リクちゃーん!
私の「天」は、リクちゃんだぁ!
私は、お姉ちゃんの腕の中で、そう思いました。
だいたい、罰をくれる「天」なんて、私、いりません。
やっぱり、いろいろ助けてくれる「天」がいいです。
リクちゃんは、今日はまたリアルな、マントヒヒの顔の、どアップTシャツを着ていました。
どうやら、昨日のゴリラTシャツと同じブランドの、おさるさんシリーズのTシャツのようです。
「あら、リク君、ちょうどよかったわ。アユと一緒に、ドン・ジョンソンでスジコ丼をテイクアウトしてきてくれない?」
あー!
またお姉ちゃんは勝手なことを言っています!
「アユちゃん、今日は水着だし、泳ぎたいんじゃ……。泳ぐ日は、いつも、一日中、アユちゃん、泳ぐよね」
私は、ぴょんと飛び跳ねて、お姉ちゃんの腕の中から逃れると、その膝の上に、水中めがねとキャップを放り、リクちゃんの手をとりました。
「そう! リクちゃん、さすが、わかってる!」
握手です!
あくしゅ!
あくしゅ!
「さっき、見てたんだけど、やっぱり、アユちゃんの飛びこみは、すごくかっこいいな」
「いやぁん、それほどでもぉ」
「マジ、かっこいいよ」
リクちゃんは、いかにも感心したように、二度、三度とうなずきます。
私は、すっかり、いい気持ちになりました。
そうして、腰と後頭部に手をあて、水着モデルのポーズをとりました。
まあ、あくまでも、私の頭の中の、水着モデルのポーズのイメージですけど。
リクちゃん!
もっと、もっと、私をほめて!
「お尻のフグも、かっこいいし」
……。
私は、一瞬で固まってしまいました。
お姉ちゃんとグリズさんが、げらげらと笑っています。
私は、はっとしました。
お姉ちゃんとグリズさんに、お尻のフグちゃんをまる見せにしていたんです。
私は、できるだけ不自然にならないように、後ずさりをして、立ち位置を変えました。
リクちゃんは、きょとんとした顔で、笑っている二人をしばし見ていましたが、それからまた私のほうに視線を戻しました。
「みんなも、かっこいいって言ってて、すごかったよ」
それって、飛びこみのことでしょう。
水着じゃなくて……。
「昨日のデッカの時みたいに、みんな、拍手してた」
「……そっ、そう? うれしいな……」
私は顔をひきつらせながらも、どうにか笑顔をつくろうとしました。
その時です。
「おまえ、なかなか、いい体してるな」
グリズさんです。
いやぁん!
またセクハラぁ!
私は、自分の体を両手で抱きしめました。
「うん。なかなか、いい体してる」
と、グリズさんの目は、リクちゃんに向けられていました。
えっ?
なに?
リクちゃん?
グリズさんは、私の体を、いやらしい目で見ていたのではありませんでした。
リクちゃんです。
リクちゃんの体を見て、言っていたのでした。
リクちゃんは、またきょとんとしています。
と、グリズさんは、おもむろに、ポロシャツを脱ぎだしました。
すごい筋肉です。
胸もおなかも、濃い肌色の絵の具で、ふちどりをしたように割れています。
グリズさんは、唇の片方をあげて、にやりとしました。
うわっ!
私は口の中で声をあげていました。
お姉ちゃんと同じ!
にやりです!
ひょっとして、文武学院にいくと、みんな、あれができるようになるのでしょうか。
それだったら、私は一生できません。
「リク君。私の同級生で、グリズ君よ」
お姉ちゃんが、リクちゃんにグリズさんを紹介しました。
グリズさんは、大きく張りでた胸の筋肉をぴくぴく動かしてみせてから、リクちゃんに、その丸太のような右腕を差し出しました。
すると、リクちゃんは、何を思ったのか、慌ててTシャツを脱ぎだしました。
グリズさんは、手を伸ばしたまま、驚いた顔で、その様子を見ています。
いえ、それは、私もお姉ちゃんも同じでした。
びっくりです。
リクちゃんは上半身、裸になると、グリズさんがしたように、やはり、盛りあがったその胸の筋肉をぴくぴくと動かしました。
……。
私とお姉ちゃんは、唖然としてしまいました。
リクちゃんは、右の手で、グリズさんの差し出した手を、がっちりとにぎりしめます。
「アユちゃんの同級生で、リクです」
「おう。ちょっとは、鍛えてるようじゃねえか」
グリズさんは、白絵の具で塗ったような歯をむきだしにします。
「いてててっ!」
リクちゃんが悲鳴をあげました。
グリズさんが、にぎった手に力をいれたんです。
「はいっ! めちゃくちゃ、鍛えています」
リクちゃんはそう言うと、着ていたTシャツのマントヒヒのように、その顔を真っ赤にしました。
「いたたたっ!」
今度は、グリズさんが悲鳴をあげました。
リクちゃんが、にぎった手に力をこめたんです。
大柄なグリズさんと比べると、リクちゃんはひとまわり小さく見えましたが、負けていないようです。
その時でした。
「すみませーん」
とことこと歩く小さい女の子の手をひいて、若いお母さんが近づいてきました。
二人は、おそろいの赤い水着を着ていました。
胸にリボンのついた、とてもかわいい水着です。
リクちゃんとグリズさんは、二人が現れたのを機に、互いの手を離しました。
リクちゃんはとてもうれしそうにグリズさんを見ていましたが、グリズさんはリクちゃんを苦々しい顔で、ちらと見ると、右の手を開いたり、にぎったりしていました。
きっと、いたたたっなんでしょう。
私は、頭をぶるぶる振って、お姉ちゃんを払いのけたくなりました。
お姉ちゃんが撫であげてくれた髪の毛もくしゃくしゃにしたくなりました。
その時です。
「こんにちは!」
明るい声が、頭の上でしました。
「コウちゃん、お久しぶりです」
私が目を開け、顔を上げると、リクちゃんがお姉ちゃんにぺこりとおじぎしていました。
リクちゃーん!
私の「天」は、リクちゃんだぁ!
私は、お姉ちゃんの腕の中で、そう思いました。
だいたい、罰をくれる「天」なんて、私、いりません。
やっぱり、いろいろ助けてくれる「天」がいいです。
リクちゃんは、今日はまたリアルな、マントヒヒの顔の、どアップTシャツを着ていました。
どうやら、昨日のゴリラTシャツと同じブランドの、おさるさんシリーズのTシャツのようです。
「あら、リク君、ちょうどよかったわ。アユと一緒に、ドン・ジョンソンでスジコ丼をテイクアウトしてきてくれない?」
あー!
またお姉ちゃんは勝手なことを言っています!
「アユちゃん、今日は水着だし、泳ぎたいんじゃ……。泳ぐ日は、いつも、一日中、アユちゃん、泳ぐよね」
私は、ぴょんと飛び跳ねて、お姉ちゃんの腕の中から逃れると、その膝の上に、水中めがねとキャップを放り、リクちゃんの手をとりました。
「そう! リクちゃん、さすが、わかってる!」
握手です!
あくしゅ!
あくしゅ!
「さっき、見てたんだけど、やっぱり、アユちゃんの飛びこみは、すごくかっこいいな」
「いやぁん、それほどでもぉ」
「マジ、かっこいいよ」
リクちゃんは、いかにも感心したように、二度、三度とうなずきます。
私は、すっかり、いい気持ちになりました。
そうして、腰と後頭部に手をあて、水着モデルのポーズをとりました。
まあ、あくまでも、私の頭の中の、水着モデルのポーズのイメージですけど。
リクちゃん!
もっと、もっと、私をほめて!
「お尻のフグも、かっこいいし」
……。
私は、一瞬で固まってしまいました。
お姉ちゃんとグリズさんが、げらげらと笑っています。
私は、はっとしました。
お姉ちゃんとグリズさんに、お尻のフグちゃんをまる見せにしていたんです。
私は、できるだけ不自然にならないように、後ずさりをして、立ち位置を変えました。
リクちゃんは、きょとんとした顔で、笑っている二人をしばし見ていましたが、それからまた私のほうに視線を戻しました。
「みんなも、かっこいいって言ってて、すごかったよ」
それって、飛びこみのことでしょう。
水着じゃなくて……。
「昨日のデッカの時みたいに、みんな、拍手してた」
「……そっ、そう? うれしいな……」
私は顔をひきつらせながらも、どうにか笑顔をつくろうとしました。
その時です。
「おまえ、なかなか、いい体してるな」
グリズさんです。
いやぁん!
またセクハラぁ!
私は、自分の体を両手で抱きしめました。
「うん。なかなか、いい体してる」
と、グリズさんの目は、リクちゃんに向けられていました。
えっ?
なに?
リクちゃん?
グリズさんは、私の体を、いやらしい目で見ていたのではありませんでした。
リクちゃんです。
リクちゃんの体を見て、言っていたのでした。
リクちゃんは、またきょとんとしています。
と、グリズさんは、おもむろに、ポロシャツを脱ぎだしました。
すごい筋肉です。
胸もおなかも、濃い肌色の絵の具で、ふちどりをしたように割れています。
グリズさんは、唇の片方をあげて、にやりとしました。
うわっ!
私は口の中で声をあげていました。
お姉ちゃんと同じ!
にやりです!
ひょっとして、文武学院にいくと、みんな、あれができるようになるのでしょうか。
それだったら、私は一生できません。
「リク君。私の同級生で、グリズ君よ」
お姉ちゃんが、リクちゃんにグリズさんを紹介しました。
グリズさんは、大きく張りでた胸の筋肉をぴくぴく動かしてみせてから、リクちゃんに、その丸太のような右腕を差し出しました。
すると、リクちゃんは、何を思ったのか、慌ててTシャツを脱ぎだしました。
グリズさんは、手を伸ばしたまま、驚いた顔で、その様子を見ています。
いえ、それは、私もお姉ちゃんも同じでした。
びっくりです。
リクちゃんは上半身、裸になると、グリズさんがしたように、やはり、盛りあがったその胸の筋肉をぴくぴくと動かしました。
……。
私とお姉ちゃんは、唖然としてしまいました。
リクちゃんは、右の手で、グリズさんの差し出した手を、がっちりとにぎりしめます。
「アユちゃんの同級生で、リクです」
「おう。ちょっとは、鍛えてるようじゃねえか」
グリズさんは、白絵の具で塗ったような歯をむきだしにします。
「いてててっ!」
リクちゃんが悲鳴をあげました。
グリズさんが、にぎった手に力をいれたんです。
「はいっ! めちゃくちゃ、鍛えています」
リクちゃんはそう言うと、着ていたTシャツのマントヒヒのように、その顔を真っ赤にしました。
「いたたたっ!」
今度は、グリズさんが悲鳴をあげました。
リクちゃんが、にぎった手に力をこめたんです。
大柄なグリズさんと比べると、リクちゃんはひとまわり小さく見えましたが、負けていないようです。
その時でした。
「すみませーん」
とことこと歩く小さい女の子の手をひいて、若いお母さんが近づいてきました。
二人は、おそろいの赤い水着を着ていました。
胸にリボンのついた、とてもかわいい水着です。
リクちゃんとグリズさんは、二人が現れたのを機に、互いの手を離しました。
リクちゃんはとてもうれしそうにグリズさんを見ていましたが、グリズさんはリクちゃんを苦々しい顔で、ちらと見ると、右の手を開いたり、にぎったりしていました。
きっと、いたたたっなんでしょう。
