燃える様な熱さと共に、鋭い痛みが体中を駆け巡った。

「……ッ」

苦痛の声を漏らし目の前の《彼》を見つめる。

「……ロ……イ」

ジルは小さく俺の名を呟くと、血の滴る蒼い剣から……震える手を離した。

俺の腹から流れる真っ赤な血がボトボトと地面に落ち、それは激しい雨に流されていく。

「……駄目……だって……ば」

そう擦れ震える声で呟いて笑うと、腹に刺さったままの蒼い剣を抜き、それを地面に投げ捨てる。

カランと剣が地面を跳ねる音が聞こえ、それと同時に傷口から溢れる様に夥しい血が流れ地面を赤く染めていった。

「……ど、どうして」

後ろからノヴァの声が聞こえ振り向くと、目の前に立ちはだかる俺をノヴァは茫然と見つめている。

それに答える様にニヤリと力無い笑みを浮かべて見せると、目の前のジルを見つめた。

ジルは宙に血塗れの手を広げたまま、カタカタとその手を震わせている。

「……自分が……甘い……って……分って……る。……それ……でも……俺は……くっ!」

急に足から力が抜けその場に蹲ると、咄嗟にジルが手を伸ばし俺の体を支えた。

「……目の……前で……誰か……が……死ぬ……のは……嫌……なん……だ」

カタカタと震え続けるジルの腕を掴み立ち上がると、真っ直ぐに彼の蒼い瞳を見つめる。

「……目の……前で……誰か……が……殺す……のは……嫌……なん……だ」

その俺の言葉にジルは悲しそうに瞳を揺らすと、微かに唇を噛み締めた。

そんな彼を真っ直ぐに見つめたまま、擦れた声を振り絞る。

「……戦え……ば……戦う……ほど……この……世界……は……崩壊……に……向う」

次第に目の前が静かな闇に包まれ、辺りの景色が霞んで行く。

今にも途切れてしまいそうな意識の中、ジルの腕を強く握り締めたまま声を振り絞る。

「……俺……は……」

そこまで言って急に足の力が抜けつんのめる様に倒れると、それをジルに抱きとめられた。

彼の悲しい鼓動を聞きながら、静かに目を閉じる。

「……救い……たい……ん……だ…………世界……を」

それだけ呟くと、そのままどこまでも深い闇に包まれて行くのを感じた。