「生きてる意味……あるのかな」

思った言葉が口に出てしまっていた。

キッチンで悲しそうな顔をして俺を見つめる男を見て……すぐに後悔する。

「……ロイ様」

……俺は何て弱いのだろうか。

……いつも誰かを傷付けてばかりだ。

気まずくなり俯いていると、男は朝食の支度の手を止め、俺の目の前に歩いて来ると、そっと跪き俯く俺の顔を見上げた。

「国王様が亡くなられた今、王家の血筋はロイ様のみ。このセレリアを治められるのは……ロイ様だけです」

男はそう言うと、とても真剣な顔をして俺を見つめる。

その男の言葉に、急にもう会えない多くの人達を思い出し、胸が締め付けられる様に苦しくなる。

またツキツキと痛み出した右肩に手を当てながら、精一杯の笑顔を作った。

「セレリアが無くなった今じゃ……王族も何もないだろう?」

痛みを悟られない様に最高の笑顔を出したつもりだったが……どうやら失敗したらしい。

男の瞳が悲しそうに揺れた。

「俺は勇者じゃなかった。何も救えず……何も守れなかった。城も、家族も……町のみんなも」

……違う。

こんな事が言いたいんじゃない。

これじゃ彼を悲しませるだけだ。

分っているのに口は勝手に動き続けた。

「……俺は……何のために……」

俯き拳を握り締めたまま、声を詰まらせる。