愛を知らない私には

「これから、お世話になります。睦月杏と申します……!なんでもするのでここに置いてください……」

ここは幸川家のリビング。綺麗に整理整頓されカジュアルな雰囲気の家具で統一された素敵なリビングだ。そんなところで私は私は深く頭を下げていた。

すると暖かい手が私の頭を撫でる。

「そんなにかしこまらないでよ。杏ちゃんは今日からうちの子なんだからさ。ほら顔上げて?」

ゆっくりと顔を上げる私。すると視界に入ってきたのは柔らかく微笑んだ幸川夫婦。

「初めまして。僕はこの家の主人の幸川凛太郎だよ。杏ちゃん、あのクソ野郎……間違えた。お父さんに似てきれいな顔だね。」

「初めまして。睦月杏ちゃん。私はこの家のお母さんの幸川花恋です。私、あなたのお母さんの顔だけは認めてたの。本当にそっくりね。可愛いわ……」

懐かしそうに私を見つめる幸川夫婦。

その瞳は澄んでいて綺麗だ。

って!ああっ、何か言わないと……

「私、可愛くなんてないですよ!……お母さんとお父さんにも可愛いって言ってもらえなかった落ちこぼれなので……」

そう苦笑いで言うと幸川夫婦は鬼の形相になる。

「なんだって?!可愛いって言ってもらったことないだと?!あいつらどこまでクズなんだよっ……!」

「ええ、そうね。あいつらは自分のことしか考えられない鳥並みの頭脳の持ち主だもの……」

本気の顔で怒ってくれている幸川夫婦。

そんな……私が悪いんだから……当たり前のことなのに……

「私が、私が悪かったんです……お父さんとお母さんは悪くないんです……」

精一杯の作り笑いでそう告げる。

すると幸川夫婦は今度はあきれた表情で、

「「健気すぎるわ……この子……」」

そう言ったので、

「本当のことですから……」

さっきよりもっと本気の作り笑いでそう付け足す。

「可愛いっ……!笑顔凶器ねこの子。」

「本当にあいつらの子なのか……?」

あはは、と苦笑いでたえていると……



トントントントン、



階段を下りる音が3つ部屋に響き渡った。

「父さん、まだ話し終わらないの?見てほしい資料あるんだけど……」

低いけど優しい声色。

「もうそろリビング入っていい?見たいテレビあるんだよ。」

少年のようなハスキーボイス。

「僕、早くお姉ちゃん見てみたい!待ちくたびれたよ……死にそう……」

子犬のような愛らしさのある高めの声。

すべて違う声色だけど全部男の子のもの。 

え?待って幸川夫婦だけじゃなかったの!?

「はあ、お前ら。お父さんが呼ぶまで部屋にいろっていっただろう。どうして出てきているんだ。」

「「「はいはい、ごめんなさい。」」」

悪びれもなくリビングに入ってくる3人の男の子。

「お前らそこに並びなさい。

……杏ちゃん、この人たちはうちの息子だよ。教えるのが遅くなってごめんね。」

「え、えええ!!!」

嘘、兄弟?!私、仲良くする自信ないよ……

えっと、とりあえず自己紹介、だよね……

「む、睦月杏です。今日からお世話になります……よろしくお願いします……」

ぺこりと頭を下げると三兄弟さんを見る。

わあ、綺麗な顔だな…背も高い……

「睦月杏さんね。

僕は長男の幸川優斗(ゆうと)。高3だよ。一応生徒会長をやってるんだ。わからないことがあったらなんでも聞いてね。」

えっと、優しそうな雰囲気のセンター分けの人が優斗さんっと……

「あんたが父さんの言ってた……

俺が次男の悠斗(はると)。高2。同い年だけど誕生日俺の方が早いらしい!俺が兄貴だぞ!」

えっと、八重歯があるベリーショートの人が悠斗さんっと……

「へえ、案外可愛い顔してんな。

僕は三男の幸川蓮斗。高1。お前を僕の下僕にしてやる!」

「こら、下僕にしない。」 

えっと、刈り上げマッシュの人が蓮斗さんっと……

「えっと、優斗さん、悠斗さん、蓮斗さん。これからよろしくお願いします。」

にこっと微笑むと皆さんが顔を赤らめる。

「……っまって、笑顔ギャップありすぎ……」

「かっ……かわっ……かわいいっ……」

「下僕に僕が?そんなわけ……」

「どうしましたか?」

皆さんぼそぼそっというから聞き取れなかった……

「「「どうしてもないっ!!!」」」

「あらあら……杏ちゃん可愛いものねぇ……」

「「「「母さん!うるさい!」」」

私は不思議に思いながら部屋に案内してくれると言う主人さんに付いていった。