Incomplete -この世界にいない君に、恋をした-




私は空を見上げた。
澄み渡る青空の向こう側に、確かに彼がいると信じて。




私は、もう迷わない。

彼が繋いでくれたこの命を、一瞬一瞬、大切に噛みしめながら、明日という新しいページをめくっていく。


蒼、私ちゃんと生きてるよ。


私たちは、いつだって不完全だ。


完璧な人間なんてどこにもいない。

誰もがどこか欠けていて、孤独で、傷つきやすい。


けれど、彼が教えてくれたんだ。


その欠けている部分こそが、私たちが誰かを必要とし、互いに惹かれ合うための“場所”なのだと。




彼の大きな手も、低く響く声も、すべては幻になってしまった。


でも、違う。


彼が最期に“俺の魂の半分を預ける”と言ってくれた通り、私という人間の中で、彼は今も形を変えて生き続けている。


私が美味しいものを食べて幸せを感じるとき、誰かを思いやって優しくなれたとき、私の首筋で紋章がそっと熱を帯びる。



「ねえ、蒼。聞いてる?」


私はそっと微笑む。

この世界は残酷で、不完全で、何ひとつ望み通りにはいかない。


けれど、彼と過ごしたあの歪な時間が、私の人生を何よりも愛おしくさせた。


欠けているからこそ、美しい。


私はこれからもこの不完全な世界を、精一杯生き抜いていく。


いつか、この命を使い果たして、彼の元へたどり着くその日まで。


──私の命は、永遠に彼の魂の半分と共に在る






END.