Incomplete -この世界にいない君に、恋をした-



「……汚い手で、触れるな!!」


空気が凍りついた。

男の指が私の肌に触れるよりも早く、蒼の手から出た、銀色の閃光が男の腕を切り裂いた。


「ぎゃえあああっ!」



路地裏に、男の悲鳴が響く。

蒼は男を地面に叩き伏せると、その首元に冷たい靴底を乗せて踏みつけた。


先ほどまでの、私を甘く抱きしめていた優しい瞳はどこにもない。
そこにあるのは、歪みを滅する番人の、氷のように冷徹な瞳だけだった。



「……死にたいのか? 俺の糧を、その卑しい視界に入れること自体が、お前の存在意義を終わらせる理由になる」


「た、助けてくれ……俺はただ……!」


「……ああ、そうだ。お前はただの虫けらだ。なら、死ぬのも一瞬だ」


蒼の指先から、黒いノイズが霧のように噴き出し、男の身体を浸食していく。


男は断末魔すら上げられず、その場で炭のように崩れ去り、最後には路地裏の塵に溶けて消えた。


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