Incomplete -この世界にいない君に、恋をした-




「……お前は俺のものだって、“ここ”に書いてあるのにな」



彼は私の首筋の紋章を、人差し指でなぞりながら、ぞくっとするような声音で告げた。


その指が熱くて、私はたまらず彼のシャツの襟元を掴んだ。


彼は私の反応に満足そうに目を細めると、再び私の腰を抱き寄せて、街の深淵へと歩き出す。

離してくれない。


それどころか、街に来てからというもの、彼の独占欲は隠れ家にいた時よりもずっと増している。


私を庇うふりをしては、その手は離れず、私の肌に触れ続けていた。





「おいおい……ずいぶんと美味そうな匂いがするじゃねぇか。番人の連れか? それとも、ただの“予備の糧”かよ」




薄暗い路地裏の影から、ひょろりと痩せた男が姿を現した。

歪みの影響で肌は土気色に濁り、その瞳は飢えた獣のように這い回る。

男が粘ついた指先を伸ばし、私の腕に触れようとした、その瞬間だった。




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