Incomplete -この世界にいない君に、恋をした-



「……街へ行く。ここが耐えられないなら、もっと歪みが渦巻く街へ行って、俺たちのこの関係を維持できるだけの“対価”を探し出すんだ」



蒼は私を力強く抱き起こすと、迷いのない瞳で告げた。
ここに来たばかりの時は、私を元の世界へ帰すための繋がりの“手がかり”と言っていた。
二人で一緒にいれる“対価”に変わっている事が、この状況の中での唯一の希望だった。




「……ここと違って、次はもっと厳しい環境になる。……死ぬより辛い目に遭うかもしれない。それでも俺についてくるか?」



その言葉は、昨夜の甘い囁きとは対極にある、番人としての決断だった。
私は崩れゆく壁を背に、蒼の冷たい手を取り、強く握り返した。




「…死ぬより辛くても、蒼がいない世界の方が嫌だ」


「…そうか」


蒼は少しだけ切なげに微笑み、私の額に誓いのように唇を落とした。



「必ず、俺が守るから…」





隠れ家の屋根が完全に崩れ落ち、外の荒れ果てた景色が剥き出しになる。




私たちはこの“甘い楽園”を捨て、“対価”を探すために、足元から消えゆく大地を踏みしめて立ち上がった。



.