家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 巳影は明莉が呼んだ言葉に、小さく息をついた。

 嬉しそうなため息だ。

「一緒に住んでも、夫婦前提の仲になっても、明莉の気持ちが俺に向くまでは我慢しようと思っていたから……」

 その後に声を潜めて続けた。

 明莉は驚いてしまう。

 確かに巳影と軽い接触……手が触れるとか、髪を撫でるとか……そのくらいはあったものの、こうしてしっかりと抱きしめられるのはあの夜以来だ。

 もちろんこれ以上の触れ合いもあったはずがない。

 でもそれには理由があったのだ。

 あまりに誠実で優しい理由に、明莉の胸が、じんわり熱を持つ。

「それで、待ってくれてたの……?」

 噛みしめるように、聞いた。

「ああ。今度こそ、心が通じた触れ合いにしたかったんだ」

 巳影は当然だという響きの声で、その通りのことを言う。