家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

「明莉」

 明莉を優しく、それでいてしっかりと抱きしめた巳影は、潜めた声で明莉を呼んだ。

 二人は三十センチ近く、身長差があるので、巳影の声は明莉の耳あたりに届いた。

 軽くぞくっとすると同時に、跳ね上がった心臓が、どくどくと速い鼓動を刻みだす。

「ずっとこうして触れたかったんだ」

 抱きしめられた後ろから、巳影の声がする。

 しみじみとした響きの声は、彼の抱く強い感嘆を感じさせた。

 その声も言葉も、明莉の胸を震わせる。

「ミカ……くん」

 つい数時間前から呼ぶようにした呼び方で、巳影を呼んだ。

 すっかり心の距離が近付いたこともあり、呼び方を変えたいと思ったのだ。

 以前、明莉の女友達のほうの美花がそう言っていた通り、『ミカ』は巳影の学生時代の愛称だそうだ。

 よってちょうど良いと思い、巳影も「照れるな」と言いつつ肯定してくれたので、二人でそう呼ぼうと決めた呼称だ。

 そんな呼び方からも、二人の関係が変わったことを実感させられて、明莉の胸はさらにドキドキしてしまう。