家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 夜も更けた頃、二人はようやく帰宅した。

 四人が顔を合わせたのはお昼過ぎだったが、色々とあって、挨拶ができたときはもう夕方だった。

 よって、遅くなったので夕食を食べてから帰ってきたのだ。

「今日はありがとう。お見舞いがこんな形になるのは予想外だったけど、嬉しかった」

 玄関の鍵を開けて、先に入った明莉は巳影を振り向いて、改めてお礼を言う。

 巳影も穏やかな微笑を浮かべて、「いや」と言ってくれた。

「お礼を言うのは俺のほうだ。本当にありがとう」

 優しい笑顔が行き交う。

 明莉が先に靴を脱いで上がり、巳影もそれに続いたのだが……。

「ひゃっ……!?」

 明莉の背中を、ふわっとなにかあたたかいものがくるんだ。

 驚いた明莉は、つい声を上げてしまう。

 漂ったのは巳影の持つ、お日様のような香りだ。

 まずその香りから、『抱きしめられた』と認識して、明莉の心臓は大きく跳ねた。

 夏場なので、軽く汗の香りもする。

 でもそんなことは気にならなかった。

 巳影から抱きしめられた事実のほうが重要だ。