家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 お礼を言ったあとに、ポケットから出したハンカチを明莉に差し出してくれた。

 明莉もお礼を言い、それを受け取る。

 目元に当てたハンカチ、深い青色のものだったが、そのハンカチから白檀の香りはしなかった。

 でも代わりに彼本人の持つ香りが感じられる。

 今の明莉には一番近しくて、安心できる香りだ。

「だけど今、明莉にすべてを知ってもらえて、改めてプロポーズできて良かったと思う。ご両親にも、より心のこもったご挨拶ができるだろうから」

 会計を終えて、連れ立ってカフェを出る。

 外に出てから巳影がそう言った。

 明莉ももう泣くことはなく、強く頷いた。

「うん。私もしっかり定まった気持ちで挨拶できることになって、嬉しい」

 病院へ戻る間、二人の手は自然と繋がれていた。

 少しずつ近付いてはいたものの、まだ曖昧だった二人の関係が、繋いだ手を通してしっかりと結ばれたようであった。