家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

「そっか……それで香りが残ってたんだ」

 ハンカチの件にも納得を覚えた。

 だから自分はあれを『朝日奈くんのまとっていた香り』と感じ取ったわけだ。

 でもバーで目の前にいた彼が、まさにその『朝日奈くん』であることには繋がらなかった……。

「だからあれで気付かれたかと思っていた。でも翌朝話したら、そうではなかったようだから……」

 巳影は別の意味で気まずそうになる。

 確かにあの明けの朝、彼は「覚えていないのか?」と言っていた。

 自分はそれを『昨夜のことを覚えていないのか?』と言われたのだとばかり思ったのだが、違う意味だったのだ。

 明莉の抱いた申し訳なさは、ピークに達する。

 巳影が話してくれなかったのは確かだが、気付くきっかけはいくつもあったのだ、と知ってしまう。

「ごめん……私ったら、不義理をしてばかりだったんだね」

 よってうつむいた。

 小さく謝る。