家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 当日、お昼過ぎ。

 もう七月になって数日経つので、すっかり夏模様だ。

 約束の時間になり、明莉は病院エントランスまで巳影を迎えに行った。

 気温も上がり、暑い中なのに、巳影はしっかりスーツ姿だった。

 腕には黄色い花が数輪まとめられた花束があった。

 花はガーベラだ。

 わざわざお見舞いの品まで用意してくれる巳影は、本当に真面目な人である。

 そんな巳影と連れ立って、両親のいる病室まで戻ってきた。

「失礼いたします」

 巳影は丁寧に挨拶して、室内に入る。

 明莉も緊張しながら、あとから入った。

 室内には、ベッドに上半身を起こしている母と、スーツを着て隣に立つ父がいる。

 二人とも少し緊張しているように見えた。

「はじめまして。わたくし、泉谷と……」

 その二人に対して巳影は軽く頭を下げて、名前を名乗りかけた。

 だがそこで、母が高い声を上げた。

「あら! 朝日奈(あさひな)くんじゃない!」

 驚いた、といわんばかりの顔で呼んだのは、まったく違う名前だ。

「え?」

 明莉はきょとんとしてしまう。