家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

「ごめんなさいねぇ、心配かけて」

 病院の一室で、母はベッドに横たわっていた。

 明莉とよく似た優しげな顔立ちに、茶色のショートヘアという容姿の母は今、入院着を着ている。

 明莉の顔を見て、申し訳なさそうに、そう言ってくれた。

 怪我をしてから数時間経ったというから、少し気持ちは落ち着いているように見えた。

 とりあえず顔が見られて、話もできて、明莉は改めて安心した。

「ううん、とりあえず、頭を打たなくて良かったよ」

「そうね、不幸中の幸いだわ」

 明莉の言葉に、母も頬を緩めた。

 自分自身でも、もちろん不安だっただろう。

「明莉、現状をひとまずまとめたんだが……」

 明莉の隣に立って、見守っていた父が口を開いた。

 黒髪を短く刈り、たれ目気味の目をした父は細身の体型だ。

 事故は父の出勤前に起こったということで、開襟シャツにチノパンという家での服を着ていた。

 仕事は急遽、休みをもらって、母を病院に連れてきたのだという。

「うん、聞かせて」

 明莉は父の勧めるままに、パイプ椅子に腰掛けた。

 それで話を静かに聞く。