家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 明莉の父の都合と、巳影の仕事の都合がなかなか噛み合わずに遅くなってしまったが、ようやく報告ができる。

 その気持ちは巳影も同じだったらしい。

「ご両親にご許可をいただけたら、晴れて婚姻届も提出できる。待ち遠しかったよ」

 そのように言うので、明莉は照れてしまった。

 もう同居して一ヵ月が経ち、ほとんど結婚した気でいるけれど、婚姻届を出せば名実ともに夫婦だ。

 それを楽しみにしてもらえるのは、やはりくすぐったい。

「う、うん。そうだね」

 よって明莉の声ははにかんだ。

 巳影がそれに対して苦笑する。

「大丈夫だ、まだ同居して一ヵ月しか経たない。明莉に好きになってもらえるための時間は、まだ十一ヶ月もあるんだからな」

 それで自信満々に言うものだから、明莉ははっきり照れてしまった。

 自分に対してこれほどの想いを寄せてもらえたら、嬉しいけれどくすぐったい。

 それに自分自身も、夕食を作っているとき、巳影に『家族としての好意』があると認識したのだ。

 あの気持ちがよみがえってしまう。

 楽しかったり、少し照れ臭かったりする夕食のあとには、巳影が買ってきてくれたスイーツの箱を開けた。

 中身は艶やかなさくらんぼがたっぷりと乗ったタルトが二つだ。

 赤い宝石が乗っているような美しいスイーツを見た明莉の瞳は、食べる前からキラキラに輝いた。