家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

(巳影さんは私を好き……でいてくれるのに。なにもなくて良いのかな?)

 巳影からの気持ちを考えるとくすぐったいが、今は二人の間になにも起こっていないというのが疑問点だ。

 彼にとっては、恋をしている相手と暮らしている状況なのに。

 しかも明莉からも、意味は違うものの、好感を持っているのに。

 巳影から明莉を求めてきても、なにもおかしくない。

 だけどそういうことは特に起こらない……。

(……しっかりした人だからかな? 私の気持ちが定まるまで待ってくれる、とか。そういうつもりなのかも……)

 本当のところはわからないものの、明莉にとって、一番想像しやすくて、納得できる理由はそれだった。

 実際、巳影が真面目で誠実なのはもうよくわかっている。

 それが理由である可能性は高そうだ。

 そこへピンポーン、とインターホンが鳴った。

(巳影さんだ!)

 ちょうど彼のことを考えていたところだったので、明莉の心はパッと明るくなった。

 疑問に思う気持ちは一旦置いておくことにする。

 作業の手を止めて、キッチンを出た。