家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 初夏の食材が出回るようになってきて、料理が楽しい。

 夕食の支度を進めながら、ピンクのエプロンをかけた明莉は、鼻歌でも歌いそうな気持ちでいた。

 今日は巳影も早く帰れる予定ということで、料理にも力が入る。

 夕食のメインは、新鮮なイカとオクラを使ったパスタだ。

 ほかに、夏の野菜である枝豆が買えたので、塩ゆでにしようと決めた。

 パスタにも合うように、上から粉チーズを振ろうと思う。

 熱々で出したいから、仕上げるのは巳影が帰ってからだ。

 きっと良い副菜兼おつまみになるだろう。

 もう家の設備にもすっかり慣れて、システムキッチンでの料理もスムーズに進む。

(喜んでもらえるといいな)

 巳影との生活は唐突なスタートだったし、「一年の予定で」なんて言ったのに、始まってみればとても快適だった。

 明莉が失職と圭二との別れで一番辛いと思った『独りぼっちになること』は、もうまったく感じない。

 巳影が同じ家で暮らしているからだ。

 仕事で毎日多忙なのに、できる限り夜はご飯に間に合うように帰ってくれるし、昼間は家に一人だとしても、孤独には感じなかった。

 巳影が言ったように、『好きになってもらう』はまだわからないけど……。