家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

(side 明莉)


「ええっ!? 明莉が結婚!?」

 巳影と同居を始めてから、半月ほどあとのこと。

 カフェで久しぶりに会った友達・美花は声をひっくり返らせた。

「う、うん、そうなの。まだ婚姻届は出してないし、急な話だったんだけど……」

 この反応は想定内だったので、明莉ははにかみながら肯定する。

 六月に入り、雨が降り続く季節になった。

 今日も弱い雨が降っていて、今日、このカフェまで明莉は駅から傘をさしてやってきた。

 小花柄のワンピースも麻の素材で、多少濡れても平気だろうと選んだものだ。

 入ったこのカフェは、白い壁に木製の家具が並ぶナチュラルな雰囲気で、植物がたくさん飾られている。

 落ち着ける雰囲気だから、気に入っているのだ。

「はぁー……、驚いた。圭二さんと?」

 驚きのあまり、カップの紅茶を飲む手も数秒止まった美花が、感嘆の声を出す。

 カップをそっとソーサーに置いた。

 でもこの質問はだいぶ気まずい。

 明莉が長年、圭二と付き合ってきた経緯や時間をよく知っている美花なら、この発想は自然だけど。

「えっと、違うの。圭ちゃ……圭二とは、もう別れて……」

 だから歯切れ悪くなりつつも、否定して、事情を話した。