家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 巳影がたまに利用する高級シティホテルは、幸い空室があった。

 安堵して、明莉を一室に泊めようとしたのだが……。

「……独りにしないで……!」

 巳影が部屋から出て行こうとした瞬間、明莉がガバッと抱き着いてきた。

 それでまた鼻を鳴らして、半泣きになるものだから、巳影は動けなくなった。

「帰りたくないのぉ……誰もいないのに!」

 強く抱き着いて、泣きそうな声で訴える。

 どうやら酔いのために、連れてこられたここが家だと勘違いしているようだが、女性から……それも巳影の中で特別な女性からこんなふうに縋られて、放置できるわけがない。

 独りになりたくないと言われれば、叶えてあげる選択肢しかなかった。

 明莉のあまりに心細そうで、また可憐な様子を目の当たりにして、巳影は折れた。

「わかった、わかったから。とりあえず中に入ろう」

 動揺のあまり敬語も抜けた。

 ドアを開けたところでやり取りするのも悪いので、なんとか部屋に二人で入ったのだが……。