家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

「泉谷さん? 閉店……」

 でも閉店の時間なのだ。

 バーテンダーから急かされてしまった。

 明莉はこれほどふにゃふにゃだし、とりあえず自分が連れて店を出なければいけない。

「カードで良いですか? 俺が払います」

 とりあえずポケットから財布を取り出した。

 クレジットカードを差し出して、バーテンダーに会計をしてもらう。

「ええー……払います……」

 酔っていても、巳影が全額払ってしまったのを知ったようだ。

 明莉は困惑の声を上げた。

 でもここでやり取りをするのも、店を閉める邪魔になる。

「あとで良いです。とりあえず出ましょう」

 そう言って、半ば明莉を担ぐように肩を貸して、店を出た。

 もちろん電車があるわけもないので、スマホからタクシーを呼んだ。

 しかしここも困った。

 明莉の家など知らない。

 でも住所を聞きだすのも……。

 明莉は店の前にある小さなベンチに腰掛けて、ぽうっとしていたし、困った巳影は心を決めた。

「今夜は泊まっていくと良いです。あなただけで一室使って良いですから……」

 そう説明して、タクシーをホテルへ向かわせた。