家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 ドキッとしたのは、触れてしまってからだった。

 彼女の体に触れるなんて、今までしたことがない。

 お酒のためとはいえ、こんな幸せが訪れるなんて……。

 巳影が内心、動揺と高揚を感じている間に、明莉は体勢を立て直した。

「あー……すみません。……んん、いい香り……」

 ふにゃっとした声で言ったが、そのあとにまた同じことを言う。

 軽く体が触れ合っていた巳影に、そっと顔を寄せてくる。

 今度は白檀の香りではないだろう。

 でも今日のワイシャツはクリーニングに出したものではない。

 昨日、ハウスキーパーが洗って干して、天日でよく乾かしてくれたもの……。

 最後にはアイロンもかけてくれた。

 明莉の言葉は、どうやらそのシャツを指しているようだ。

(お日様の香り……とか? 俺にはまったくわからないが)

 動揺しつつも、きっとそうだと思った。

 嗅覚が鋭いと言っていたし、思い当たるのはそれしかない。

「あったかくなりそう……」

 明莉の酔いはだいぶ強いらしい。

 甘いともいえる声でそんなことを言うものだから、巳影の心臓ははっきり高鳴ってしまう。

 このあと帰ってしまうのが惜しい、と思いつつあったことが、はっきり頭に浮かぶ。

 心臓の鼓動が急速に速くなってきた。