家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 その後はなんでもない話をしながら飲んだ。

「ハンカチ、洗って返しますね」とか、「手間なのでいいですよ」とか、穏やかなやり取りだ。

 そしていつの間にか深夜も回って、閉店の時間になった。

「そろそろ閉めますよ」

 バーテンダーから声をかけられて、巳影はハッとした。

 だいぶ飲んだし、閉店まで過ごしてしまうなんて、いつぶりかもわからない。

 今日は少し仕事でくたびれたから、一杯飲んで帰ろうか、と思っただけなのに、こんな展開になるとは予想外だった。

 でもきっと明莉も同じだっただろう。

 見るからにふわふわした様子ながら、目を丸くした。

「ああ……こんな時間。お会計……」

 そして財布を出すためだろう、バッグを探ろうとした。

 だがだいぶ酔っているのだ。

 バッグに気を取られたためか、体がふらっと揺れた。

「危ない!」

 巳影はとっさに手を出した。

 彼女の肩を掴んで支える。