家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

「……なるほど。それは大変な状況ですね」

 改めて酒を注文して、話す。

 巳影はウイスキーのロックを、明莉はフルーツのカクテルを頼んだ。

 明莉が話した、現在このように荒れている事情を聞いて、巳影は深刻な顔になってしまう。

 不運な出来事で、急に仕事を失ったのだという。

 おまけにその日、帰宅すると、同棲していた彼氏の裏切りが発覚。

 別れと、それに伴う引っ越しを余儀なくされた……。

 聞けば聞くほど状況は悪いし、しかも彼女に落ち度はまるでない。

 それは気持ちも荒れるだろうし、お酒のひとつも飲みたくなるだろう。

 共感と、心配する気持ちが巳影の胸に湧いた。

「本当ですよ! もうやりきれなくって……」

 頷いた巳影に、明莉はもっと辛そうな声になり、カクテルをぐいっと飲んだ。

 オレンジジュースをベースに作られているとはいえ、半分近くはアルコールでできている。

 巳影は彼女が悪酔いしてしまわないか、ハラハラした。

 それにこんな深刻な事情を聞いてしまえば、巳影が彼女の姿を見たとき話そうと思っていた『話しかけた動機』など、こちらから言い出すこともできなかった。

 どう考えても今の彼女に話すことではない。

 よって巳影はただ話を聞き、時折、彼女に水も一緒に飲むよう勧めた。