(完結)家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 子どもの名前が発表されたその場は、一気に感嘆の空気で満ちる。

「かわいい名前だわ! それに、この字はもしかして……」

 泣きそうなほどに顔を崩した明莉の母が、両手を合わせる。

 その母の肩を、父が同じような顔で、優しく抱いた。

 横では巳影の祖父母も同じ顔で頷いている。

「はい。明莉の『莉』を一文字と、俺の昔の姓『朝日奈』から一文字、取りました」

 巳影が静かに説明する。

 感じ入った顔で、噛みしめるような響きの声だ。

「素敵ね。昔の巳影くんも、確かに巳影くんだものね」

 母が一粒、涙を零す。

 幸せそうに肯定してくれた。

「ああ。想いがたくさん込められているのがわかるよ」

 そんな母の肩を軽く叩いて、父も噛みしめる口調でそう言った。

「うん。私たちが初めて出会ったときのことを思い出せるな、って思って決めたの」

 両親からの受け止めが嬉しくて、明莉の胸も熱くなる。

 小さく頷いて、腕の中の子……莉奈を見下ろした。

「これからも俺たち三人を見守ってください」

 最後に巳影が強い決意の顔で、そう締めた。

「もちろんだ」

 辰巳が力強く頷いて、隣の祖母も何度も頷いた。

「これからが楽しみね」

 明莉の母も、涙を指先で拭って、笑みを浮かべる。

 隣の父も同じ表情になった。

 そこで再び、コンコンッとノックの音がした。