家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

(side 巳影)


 明莉が引っ越してきてから十日ほどが経った。

 五月も下旬に入り、爽やかな気候だ。

 引っ越しの翌日には二人で婚姻届も書いた。

 実際に提出するのは、来月に双方の両親に顔合わせをしてからの予定だ。

 それでも同居を開始したし、二人の気持ちの面ではもう夫婦である。

 名実ともに夫婦になれるのは少し先になるが、巳影はすでに幸せでいっぱいだった。

 今日、平日の仕事もそのために穏やかな気持ちで進められたくらいだ。

「社長、週末のミーティングの件で営業部の部長から連絡がありました。提出資料が予定日に間に合わない見込みなので、当日朝の提出にしてほしいとのことです」

 自社ビルの最上階にある社長室で仕事に取り組んでいた巳影の元へ、秘書がやってきた。

 三十代の女性秘書である高城(たかしろ)は、後ろで髪をきっちりまとめて、ピシッとスーツを着こなしている。

 やや気難しい面はあるが、仕事ができる彼女のことを、巳影も信用して頼っていた。