(完結)家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 タクシー会社の電話番号もスマホに登録して、なにかあれば、すぐ呼べる状態にしてある。

 でも巳影はちょっと不満げな顔をした。

「そうだろうが、俺が付き添いたいんだよ。できれば最初から……」

 そんな顔で、拗ねるように言うものだから、明莉は笑みを通り越して、くすっと笑ってしまう。

 それほど自分を大切にしてくれるのは嬉しいけれど、この顔では、明莉を独占したいようだ。

「うん、ありがとう。でももちろん、平日でもすぐ電話をかけるから」

 幸せな顔でくすくす笑いながら、明莉はとりなすことを言った。

 明莉に笑われて、巳影もやっと、自分の表情や言い方を自覚したようだ。

 苦笑した。

「そうしてくれ」

 あたたかな空気が場に満ちる。

 きっとこの空気は、お腹にいるこの子が生まれてきても、続くだろう。

 いや、三人になったぶん、もっとあたたかな空気になる。

「本当にもうすぐ、会えるんだな」

 巳影もそう感じたようで、穏やかな視線を明莉のお腹へ向けた。