家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 主に家事全般である。

 料理、掃除、洗濯……など。

 巳影は今までハウスキーパーにそれらを頼んでいたというので、むしろ感謝されたくらいだ。

「あまり気を張らなくて良いぞ。ああ、敬語もいらないな。仮にも一緒に住むんだから、カジュアルに話そう」

 巳影も笑みを返してくれたが、そのあとそう提案した。

 確かにそれが妥当だと明莉も感じた。

 歳も同じだというし、気軽にやり取りしても良いだろう。

「わかり……わかった。えっと、巳影さん……でいいかな?」

 頷いて、口調を変える。

 少しためらったが、名前で呼んでみた。

 明莉の呼ぶ声は曖昧だったのに、巳影は頬を緩める。

「ああ。そっちのほうが嬉しい」

 その顔でそんなふうに言うものだから、明莉はちょっとはにかんでしまった。

 自分としてはこの家は長くても一年で出ていくつもりだが、それまでの時間が快適に過ごせそうだ、と思えたやり取りだった。