(完結)家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 巳影は現在、少々仕事が忙しいそうで、残業や休日出勤などで出て行くことがよくあった。

 でもこれはきっと、明莉を思ってのことだ。

 明莉がいよいよ出産となったときに、そちらに集中できるように。

 仕事が忙しくて、手を離せないという事態にならないように……。

 きっと仕事量や、進捗を調整するために尽力しているのだろう。

 そう察せるから、明莉はかえって嬉しい気持ちだった。

「そっか。それなら安心だね」

 そこまで伝わったかは不明だが、美花もにこっと笑ってくれた。

 やがてスリッパに履き替えて、コートも脱いだ美花を、奥へ案内する。

 美花がコートの中に着ていたのは、ツイード素材の膝丈ワンピースだ。

 ワインレッドのチェック柄が冬らしく、お洒落な彼女によく似合っている。

 明莉も室内とはいえ、寒い季節なので、ニット素材のワンピースを選んでいた。

「あら、お花が飾ってある。椿(つばき)かな?」

 リビングに入った美花が、近くのチェストに飾った花を見て、目元をほころばせた。

 美花が言い当てた通り、白と赤の花がついたこれは、椿の枝だ。