家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 緊張してしまい、拙い言葉だったのに、明莉はパッと顔を明るくした。

『いいの!? ぜひ見てみたい!』

 そうしてすぐそう答えた。

 巳影は心からほっとしたものだ。

 当時、携帯電話はあったものの、まだまだ普及していなかったし、性能もそれほど良くなかった。

 タブレット端末なんて存在しなかったし、パソコンが家にない家も多かった。

 だから本での調べ物も、今より多く行われていたのだ。

 そんなわけで、巳影は祖父に頼んで本を借り、数日後の部活の時間に、明莉に渡した。

『本当に借りてきてくれたんだ……! ありがとう!』

 巳影が緊張しながら渡した本を、明莉は大切そうに両腕で抱えて、お礼を言った。

 そのときの明莉の、明るくて、太陽のような笑顔を、巳影は今も思い出すことができる。

『や、約束したから』

 あまりに彼女が眩しいので、またしどろもどろになったくらいだった。


 *****


「……当時の俺ときたら。まったく、女子に慣れていないのが全開で、恥ずかしい限りだよ」

 想い出話をしたあと、巳影は苦笑してしまった。

 当時の暗かった自分を思い出して、ちょっと情けなくなる。