家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 実際、これまでの出来事で一番辛かったのは、当事者である明莉だろう。

 でも彼女は気丈だった。

 解決するまで泣くこともなく、倒れることもなく、起こった出来事に最後まで向き合った。

 それは明莉の中に、確かな強さがあるからだ。

「そう……かな? 自分ではなにもできなかったのに……」

 なのに明莉は気が引けている声で、そんなふうに言う。

 巳影はもちろん否定した。

「なにかするだけが『頑張り』じゃない。無事でいるための行動を取ってくれた。それだって立派な『頑張り』だよ」

 巳影が心からそう思って、言ったのは伝わったようだ。

 明莉は安堵したように、深く息をつく。

 もう少し体を寄せて、もっとしっかり抱きついてきた。

「ありがとう」

 返事はそれだけだった。

 でも彼女の安堵と嬉しさは、ちゃんと巳影に伝わった。

「明莉」

 長く抱き合ったあと、巳影は明莉の肩に触れて、そっと押した。

 明莉も体を少し引き、巳影を見つめてくる。