家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 急に声をかけられて、圭二の言葉は止まった。

 ばっと振り返る。

 明莉の目に、その横顔が一気に強張ったのが見えた。

「な……こいつ、今日までいないんじゃなかったのかよ!?」

 息を呑んだ圭二から、混乱した声が出る。

 圭二の背後には、厚いコートを着込み、ボストンバッグを肩から掛けた巳影がそこにいた。

 巳影は静かにガラス越しに明莉のいるすぐ前までやってきて、地面にボストンバッグを置く。

 手を伸ばし、明莉を守るようにドアに手をついた。

「明莉の危機に、なにも手を打たないでいるものか」

 そしてきっぱりと言う。

 明莉の体が、カッと熱くなった。

 凍りついていた体に、熱が戻ってくる。

 今から来るとはわかっていたけれど、最悪の事態になる前に来てくれたのだ。

 巳影は圭二に向き直り、話をする姿勢になる。