家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

「聞こえてるだろ。ダチの家に逃げ込むとか姑息な真似、しやがって。もう引いてやる気はないからな」

 乱暴な口調で圭二が続ける。

(まずい、録音ボタン……押しておけば……)

 心底後悔したが、こんな状況でスマホを触れるわけがない。

 もうすぐ巳影が来るとはいえ、いつ来るかは不明だ。

「今なら穏便に済ませてやる。金を……そうだな、三日以内に用意しろ。とりあえず百万。そのくらい口座にあるだろ」

 じっとりした口調で圭二が話す。

 明莉はからからになった喉で、なんとか唾を飲んだ。

「な……ないよ! 帰って!」

 必死で声を絞り出す。

 なのに圭二は逆に笑った。

「帰るはずがあるか? やっと捕まえたのに」

 その笑みもじっとりしていた。

 気を抜けば丸呑みにされそうで、明莉は必死に自分を奮い立たせる。

「こ、こっちこそ、もう黙ってるつもりなんてない……!」

 それだけ言い返して、震える手でワンピースのポケットに手を突っ込んだ。

 スマホを取り出す。