家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 視線が合って、明莉の心臓は止まりそうになる。

 圭二はゆっくりと立ち上がった。

 そしてガラスのドアの、目の前まで来る。

 ヒッ、と明莉は息を詰める。

 恐ろしさが込み上げた。

 すぐ逃げるべきだった。

 奥へ戻り、美花の部屋へ入って鍵をかけてしまえばいい。

 偶然通りかかった住人と一緒に入るとか、姑息な手段を使えばオートロックは抜けられるだろうが、美花の部屋には絶対入れない。

 そうわかっていたのに、足はすぐに動かなかった。

 圭二の目は恐ろしいほど据わっていたし、明莉はそんな視線に射抜かれたように、立ち尽くすしかなかった。

「明莉。開けろ」

 圭二の口が開く。

 声を聞いて、明莉の胸はさらに冷えた。

 足も震えそうになる。

 開けるわけがないが、動くこともできなかった。