家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 エレベーターで一階のエントランスホールへ着いた。

 オートロックは開けないままだが、気が急いて、外が見えるガラス張りの玄関へ近付いたのだけど……。

「……え」

 思わずひとこと、声が出てしまった。

 ひゅっと心臓が冷たくなる。

 玄関前に座っている人物がいたのだ。

 グレーのジャンパーに、ワインレッドのニット帽……。

 あぐらをかき、うつむいている。

 眠っているのかわからないが、静かに待っているという様子だった。

 誰を、もちろん明莉を……。

 明莉は凍りついた。

(なんで……どうして、ここがわかって……)

 ドッドッと心臓の鼓動が嫌な具合に速くなる。

 そのことでなにか、気配でも察したのか。

 玄関の前に座っていた人物が顔を上げた。