家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 自分のことを優先してもらえるのは嬉しい。

 でもそのために巳影が仕事を放棄する形になるのは、理想的でないし、仕事を応援している妻としても、嫌だと思う。

「なるべく早く帰ってもらえたら、それだけで私は嬉しいから」

 だから言い募る。

 巳影は数秒、黙っていた。

 その後、ごくっと喉を鳴らす音がする。

『わかった。明日の朝一番で帰る』

 巳影の判断はそれだった。

 でも明莉は少し困った。

 明日だとしても、出張の最終日なのに……。

 だが明莉がそれを口に出す前に、巳影が言った。

『いいんだ。最終日は、せっかく関西へ行くから、部下たちに半日ほど自由時間をやるつもりだった。だから大事なことは今日中に終わるように収めて、それで俺は朝一番の新幹線で帰ろう。部下たちだって、自分で帰れるからな』

 明莉を安心させるためだろうが、そう説明してくれる。