家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 ほかにも、彼の提案は魅力的だった。

 お金の心配が減る、と言っては打算的だが、少なくとも当座、住む場所に困らなくなる。

 今の状況では非常に有難い。

 甘えきるつもりはないから、一年後に別れるときにでも精算すれば良いのだ。

 それなら今は頼ってしまうのが良いかもしれない。

 結婚を前提とした同居が、ワンナイトから始まるとは予想外だったけれど……。

「わ……わかりました。では、一年間……」

 思い切った。

 大胆な返事をしてしまうことにくちびるは震えたが、それでもはっきりと言った。

 明莉の良い返事に、彼は頬を緩めた。

 幸せそうな笑みになり、改めて明莉の手を、きゅっと握ってくる。

「ああ。一年間で必ず俺のことを好きになってもらう。俺は約束を守るからな」

 それは明莉への求愛宣言だった。

 とても情熱的な言葉と眼差しで、明莉は今度こそ、シンプルにドキドキしてしまったのだけど、少しだけ引っかかった。

(『約束を守る』……? この言葉、どこかで……)

 なんとなく、聞き覚えがある気がした。

 だが頭の中に一瞬、浮かびかけただけで、すぐ消えてしまった。

 それに話も終わったからと身支度をして、彼と連れ立って外へ出て……。

 待っていたのが運転手付きの黒塗りの高級車であったのを目にしたために、またしても現実味は明莉の頭から吹っ飛んでいった。